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燈乃しえの備忘録- 絵師ノート公式ブログ -
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線のタッチで立体感や質感を出すだけでなく、大きく個性が出るペン入れ。憧れの画風を一生懸命模写してもなかなかコツが掴めないなら、思い切ってトレースしちゃいましょう。トレースは楽で勉強にならないと思っていませんか?実はペン入れにおいては模写よりもトレースの方が圧倒的に上達の近道なんですよ。
見本を横に並べて一生懸命真似して描く模写。時間も労力もたくさんかかるので、終わった後の達成感は大きいですよね。でも大変だからこそ身につくものもあれば、大変すぎて逆に見落としやすくなる事もあるんです。
一度騙されたと思って、憧れの画風をトレースしてみてください。
模写の時には気付かなかった、線の太さだったり、力の抜きどころだったり、「ここの線ってこんなに細いんだ!」「目で見ただけじゃわからないけど、なぞってみるとこの線とあの線の太さって全然違うぞ」なんて発見が次々と起こるはずです。模写だけでは気付けません。トレースだから気付けるんです。
なぜ模写では気付けなかったのでしょうか。それはプロのペン入れの技はあまりに細かすぎて、目で見ただけでは気付けないからです。
線の強弱による絵の表情はコンマ数ミリ単位で変わってきてしまいます。でもそんな細かな太さの違いなんて目で判別できません。ましてイラストの線は数も多ければ形もバラバラ。目の錯覚で“全然違う太さの線が同じ太さに見える”なんて現象もザラに起こっているでしょう。
いくら目でじっくり見たってわからない技がプロの絵の中にはたくさん隠されているんです。模写で大変な思いをして必死になればなるほどそういったコンマ数ミリの差は見落としがちになります。ペンの強弱をそっくりそのままなぞれるトレースだからこそ気付けるんです。
具体的にどのようにトレースすれば上達に繋がるのでしょうか。やり方をご紹介します。
お手本にしたいものを実際の原稿用紙サイズに拡大コピー、もしくはプリントしましょう。単行本なら186%、雑誌なら120%に拡大します。拡大すると生原稿よりどうしても線は太めになってしまいますが、やはり原寸大の方が線の強弱の具合や線と線の間隔は縮小されているものよりもわかりやすくなります。
見本の上に原稿用紙を重ねてテープで貼り合わせます。この時、断ち切りを合わせるよりも基本枠を基準に合わせるとやりやすいです。
ノド側(綴じた所側)の枠線が基本枠内に収まるように描かれている漫画はそこを基準に。ノド関係無く全てのコマが断ち切りイッパイに描かれている漫画は、セリフは基準枠内に納まるように描かれているはずなので、全てのセリフが基準枠内に収まる位置を見つけテープで貼ります。
もしトレース台を持っているなら、そのままトレースして線が同じ太さになるように気をつけながらつけペンでなぞりましょう。トレース台が無い場合は窓ガラスに貼り付けて透かしながら描くのも手です。
デジタルでトレースするのも良いですが、アナログの方が力の入れ具合がダイレクトに伝わるので、頭では無く体で覚える事ができます。またデジタルは拡大しないと描き辛いところがあるので、拡大縮小を繰り返しながらなぞっても線の幅の違いが脳に叩き込まれ辛いです。普段はデジタルの人も、トレースペン入れはなるべくならアナログがおすすめです。
実際にプロの線の強弱をそのままなぞると数え切れないほどの発見があるので、忘れないうちにどんどんメモをしましょう。
輪郭がやや太く強調されていたり、服のシワは思った以上に細い線だったり、意外と雑に線が入ってる力の抜きどころポイントがあったり、よくよく見たらベタじゃなく斜線でグラデーションになっていたり、実は定規じゃなくてフリーハンドだったり…。魅力的なペンタッチのプロほど、たった1ページの中に本当にたくさんの技が隠されていますよ。
トレースペン入れをしてプロの技をたくさん発見したら、今度はその発見を生かして自分のイラストをペン入れしてみましょう。なるべくなら手が感覚を覚えている、トレースペン入れの直後が望ましいです。
上手くすれば、その日のうちに驚くほどの上達を体験できるでしょう。それくらい、たった1ページ2ページトレースするだけでも得られる技はとても多いです。その技が自分のものになるまで、トレースペン入れしてから自分のイラストをペン入れするという事を繰り返しましょう。
シンプルな画面の漫画だって、実際にトレースして強弱を真似してみると、驚くほどたくさんの技が詰め込まれていたりします。目で見ただけではわからない技を、トレースペン入れでたくさん発見しちゃいましょう。
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