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燈乃しえの備忘録- 絵師ノート公式ブログ -
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スマホ向けに縦スクロール式の漫画が出てきていますが、日本ではまだまだ数は多くありません。これから描くなら縦スクロール漫画?それとも従来の見開き形式の漫画?考えてみましょう。
従来の紙でページをめくるように読み進める漫画とは違い、スマホで縦にスクロールしながら読む事を前提として作られた漫画の事です。
漫画原稿をただ縦に並べたタイプのものと、「ウェブトゥーン」と呼ばれる全ページが縦一本に繋がっているタイプのものがあります。
「ウェブトゥーン」は韓国発祥で、comicoやLINE等の韓国企業が発信している漫画アプリで多く見られますよ。
日本人にとって馴染みの深い見開きタイプは、紙媒体も視野に入れたつくりになっています。
コマとセリフは右上から左上、左上から右下へと流れていき、コマとコマのスキマやコマの形でリズムが作られて、さらに「視線誘導」によってテンポ作りや読者の感情のコントロールをしています。
「視線誘導」を巧みに使った演出と「めくり」を意識した続きを読ませるテクニックは見開き漫画ならではですね。
また、ここぞと言うシーンで1ページ丸々1コマ割けば、読者がページをめくった時に強い驚きを与える事ができます。迫力を出したい時や印象に強く残したい時に効果的です。これもページごとに分かれている従来の漫画ならではの演出でしょう。
他にも、見開き漫画は長い間描かれ続けてきただけあってたくさんのテクニックが存在しています。演出だけでなく、読みやすくする工夫もたくさんのプロが研究し続けてきました。その知識が蓄積されているんですね。
多くの日本人が「普通の見開き漫画の方が読みやすい」と感じるのは、慣れだけでなくこういったテクニックの面も関係しているでしょう。
見開き漫画と同じ漫画ではありますが、表現方法の全く違う「ウェブトゥーン」は、スマホで画面をスクロールしながら読むのに特化しています。
ページという概念が無く、全てが縦に長い1つの画像のようになっているのが特徴で、セリフとセリフ、コマとコマの間に空間をつくることでテンポを作っています。
コマワリも左右で分割する形は少なく、上から下に分割されて流れる形がメインです。背景を大きく描いた上からリズムを刻むようにコマを配置したり、セリフと大きく間をあけてから大きな絵を入れてインパクトを出したりと、まるで映像が流れるように進んでいきます。
フルカラーがメインなのも特徴のひとつで、見開き漫画でよく使われるトーンや手描きの効果とはまた違った印象を与え、「ウェブトゥーン」が映像的に見える要素のひとつにもなっています。
スマホでスクロールして読む事が前提なので紙媒体にする事は考えられておらず、書籍化する時には表現を大きく変更して演出が変わってしまうのが残念なところですが、もし紙媒体が無くなってデジタルオンリーな時代が来るのであれば問題なしですね。
「ウェブトゥーン」は誕生して間もない媒体であり、演出方法やテクニックはこれから開拓していく部分も多いので、新しいものに挑戦してみたい人は描いたらきっと楽しいですよ。
見開きの漫画が人気の国は、紙媒体で漫画を読む人がまだまだ多い国です。日本や英語圏では紙で読まれる事もまだまだ多いので見開き漫画の方が人気を集めていますが、今後もしデジタルがメインになってきたら変わってくるかもしれませんね。
一方で縦スクロールの「ウェブトゥーン」は、あまり紙媒体の本を買う機会の無いタイやインドネシア、ベトナム等の東南アジアを中心に人気を集めています。デジタル化がどんどん進んでいる北米でもジワジワと人気が出ています。
こうして考えると、漫画の形がどんどん変わっていきそうな予感がしますね。
縦スクロールの「ウェブトゥーン」も従来の見開き漫画も、同じ漫画ですが使われている文法がまるっきり違います。ただ縦に描けばいいだけだと甘くみてかからない方が良いでしょう。
新しい事にチャレンジして開拓していく事に興味があるなら、まだまだ未開の地である「ウェブトゥーン」を描くのはおすすめです。従来のやり方に捉われず、思いっきり表現しちゃいましょう。
従来の見開き漫画が好きならやはり見開き漫画を描くのがおすすめです。「ウェブトゥーン」は従来の漫画とは文法が全く違うので見開き漫画を読んで無意識に蓄積された文法を捨てなければなりません。ですが従来のやり方を模範するだけでは見開き漫画は衰退してしまうでしょう。従来の良さを活かしつつ、「スマホでも読みやすい漫画」を是非模索して、日本の漫画シーンを盛り上げていってください!
これまでの漫画とは全く違った新しい漫画の形「ウェブトゥーン」。スマホで読む事に特化していてデジタルがメインになってくるであろう今後どんどん伸びていきそうなコンテンツです。
「ウェブトゥーン」という新しい媒体にチャレンジしてみるも良し、従来の見開き漫画をスマホ向けに改良して日本の漫画文化を進化させていくも良し。
共通して言えるのは、従来のやり方に縛られていては時代に置いていかれてしまうという事。見開き漫画も、線が太くなったり、セリフが短くなったり、コマが少なく大きくなったりと、スマホで読みやすいようにどんどん改良されています。どんな形でも、デジタルで読む事を意識した漫画の形を模索していきたいですね。
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