クリエイター向けPCレビュー
Mouse DAIV-DQZ500M1 評価・レビュー
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イラスト制作やマンガ制作にはPhotoshopやSAI等のソフトウェアを使います。それらがサクサク動かないとストレスが溜まりますし、イメージ通りの絵を描くことはできません。当然、上達の速度も著しく遅くなってしまいます。
ではどれくらいのパソコンならPhotoshopやSAIを最適に動かせるでしょうか。BTOメーカーのMouseにはクリエイター向けパソコン「DAIV」というシリーズがあります。イラスト制作はもちろん、3DCGや動画編集等に特化したパソコンです。
このようなクリエイター向けPCで本当に快適になるのか確かめるべく、DAIVシリーズの中でも比較的ハイスペックなDAIV-DQZ500M1をレビューしてみます。
DAIV-DQZ500M1のスペック
OS | CPU |
---|---|
Windows 10 64bit | Core i7-6700K(4コア/4.00GHz) |
メモリ | グラフィックボード |
32GB(PC4-17000) | Quadro K2200 4GB |
ストレージ | チップセット |
240GB SSD + 2TB HDD | インテル Z170 Express |
光学ドライブ | 電源 |
非搭載(追加可能) | 500W(80PLUS SILVER) |
非常にハイスペックです。CPU、メモリ、グラフィックボードのどれも素晴らしい性能です。グラフィックボードはゲーム用ではなくOpenGLやOpenCLに最適化されたQuadroが採用されています。GeForceシリーズよりもクリエイターに適したグラフィックボードです。
ミドルスペックパソコンだとメモリは8GBしか搭載していないので、32GBは実に4倍です。しかし本当に32GBで足りるのでしょうか。私はPhotoshopでイラスト制作をすることが多く、解像度が高かったりレイヤー数が多かったりすると32GBでもカクカクすることがあります。
そこでカスタマイズでメモリを64GBに増設してみました。クリエイター向けPCでもっとも重要なパーツがメモリです。32GBと64GBとでどれくらい速度が変わるのか評価してみました。(性能の評価はこの記事の下の方にあります)
余談ですが光学ドライブが非搭載です。カスタマイズでDVDドライブを追加しておいたほうがいいでしょう。例えばフォントって今でもディスクにインストールした状態で販売されていますよね。他にも素材をAmazonとかで買うなら光学ドライブは必須になります。DVDドライブかブルーレイドライブかはお好みで。
DAIV-DQZ500M1の外観と内部
DAIV-DQZ500M1のケース
左から正面、上部、背面の写真です。DAIV-DQZ500M1はフルタワーデスクトップです。縦幅はかなり大きく感じます。実寸は190 × 490 × 490 mmで、重量は約10.2kgです。
MouseからDAIVシリーズが登場したのが2016年前半です。それまでMouse(当時はマウスコンピューター)のシリーズといえばゲーミングPCのG-Tuneが有名でした。でもこれからは徐々にDAIVシリーズも人気が出てくるかもしれませんね。
正面のメッシュは上と下の2つに分かれています。上は磁石でくっついているか簡単に取り外せます。下は最下部の出っ張りと押せば取り外せます。前面は吸気口なのでメッシュにホコリが溜まります。取り外せればメッシュを水洗いできますし、その内部のファンも掃除できます。DAIVはメンテナンスがとてもやりやすいデスクトップだと感じました。
左側の写真です。左側も前面と同様に吸気口です。床置きしているとこのメッシュにホコリが溜まるので、たまにティッシュ等で拭き取りましょう。
右側の写真です。DAIVのロゴが大きく描かれているだけです。
DAIV-DQZ500M1のインターフェイス、接続端子
正面の一番上にインターフェイスが揃っています。左からマイク入力、スピーカー出力、USB3.0が2つ、電源ボタンです。電源ボタンの形が前代未聞です。まるでコンポの音量調節みたいなデザインで格好良いです。一瞬戸惑いましたが、どうやら時計回りに捻ると電源が入るようです。カチッと音がするまで回すだけなので簡単です。
背面にはマザーボードのQuadro K2200の接続端子があります。マザーボードにはUSB3.0が4つ、USB2.0が2つ、PS2、有線LAN、サウンドがあります。DVIやD-Sub等の映像出力端子もありますが使いません。むしろ使ったらグラフィックボードの性能が活かせません。
Quadro K2200はDVIとDisplayPortが2つです。デュアルディスプレイにするならDisplayPortを2つ使ったほうがわかりやすいでしょう。4Kのような高解像度対応液晶モニターを使っているならDisplayPortを選んでください。
DAIV-DQZ500M1の内部
DAIV-DQZ500M1のパーツを見ていきましょう。左側を開けると内部の様子を伺えます。この写真はCPUファンとメモリです。メモリは64GBに増設したため、16GB x 4のクアッドチャンネルになっています。本来は8GB x 4の合計32GBです。
32GBメモリを1つだけよりも、複数枚搭載したデュアルチャンネルやクアッドチャンネルのほうが並列処理ができるため、読み込み速度が高速になります。メモリを増設する際にとても大切な知識なので覚えておきましょう。
Quadro K2200です。GeForce GTXシリーズのグラフィックボードに比べて随分と小さくて薄いです。静音性にも優れています。
Quadro K2200が薄いおかげで、その下のスペースがしっかり確保できています。拡張スロットはPCI Express
×16が1つ、PCI Express ×1が4つ空いています。大きいグラフィックボードだと拡張スロットが空いているのに使えないなんてことがあります(物理干渉してしまうため)。その点、DAIV-DQZ500M1は色々なパーツを追加できるので非常に優秀です。
ストレージは240GB SSDと2TB HDDの組み合わせです。今はSSDとHDDを両方使うのが人気です。高速なSSDにOSやPhotoshopをインストール、大きなデータはHDDに保存するわけです。SSDの容量は多いければ多いほど便利で高速になるので、予算に余裕があれば240GBから500GBに増やしましょう。あるいはさらに高速なNVMe SSDにするのもおすすめです。
DAIV-DQZ500M1の性能を評価
「絵師ノート」はイラスト制作者のためサイトです。だからDAIV-DQZ500M1の性能を検証する上で大切なのは「イラスト制作用ソフトウェアがサクサク動くのかどうか」です。
SAIを使っている人も多いでしょうけど、SAIはスペックの上限(制限)が低いため、高解像度やレイヤー数の多いイラストファイルはそもそも開けません。そこでやはり不朽の人気を誇るPhotoshopがサクサクになるかどうかを評価指標にします。
以下のデータは3回計測した平均値です。使用したpsdファイルはレイヤー数239、解像度350、キャンバスサイズ4066x4066pxです(比較しやすくするためにわざと大きいファイルを用意しました)。
メモリ64GBの場合
検証内容 | 秒数 |
---|---|
Photoshopの起動速度 | 2.44秒 |
ファイルの読み込み速度 | 3.55秒 |
保存速度 | 4.34秒 |
フィールドぼかしの反映速度 | 2.24秒 |
焦点領域の反映速度 | 2.63秒 |
スマートシャープの反映速度 | 2.64秒 |
大きなファイルを扱ってみたのに非常に高速でとても快適でした。私が考える「サクサク感」って3秒くらいです。10秒とかかかっちゃうとさすがに重いと感じます。もっと軽いファイルならすべての操作が一瞬で完了するので、イラストを描くスピードが段違いに早くなりますよ。
メモリ32GBの場合
検証内容 | 秒数 |
---|---|
Photoshopの起動速度 | 4.06秒 |
ファイルの読み込み速度 | 4.29秒 |
保存速度 | 4.44秒 |
フィールドぼかしの反映速度 | 3.24秒 |
焦点領域の反映速度 | 3秒 |
スマートシャープの反映速度 | 3.2秒 |
ちなみにPhotoshopの起動速度、ファイルの読み込み速度、保存速度はCPU、メモリ、ストレージに依存しているはずです。メモリは多ければ多いほど速くなります。ストレージはHDDよりもSSDのほうが当然高速です。
フィルター関連はグラフィックボードが影響してきます。グラフィックボードありとなしとでは大違いです。そしてメモリ量も影響します。どの計測結果でも64GBのほうが早くなっていますよね。だからイラスト制作用PCを買うならメモリを最優先に考えてください。
SSDとHDDの速度
DAIV-DQZ500M1にはSSDとHDDの両方が搭載されています。CrystalDiskMarkというソフトでSSDとHDDの速度を計測しました。上の画像では左側がSSD、右側がHDDです。
シーケンシャルリードもシーケンシャルライトもSSDのほうが2倍以上も高速です。シーケンシャルリードはWindowsの起動、Photoshopの起動、ファイルの読み込み等に影響します。シーケンシャルライトはファイルコピーやファイル保存の速度に影響します。
実際にPhotoshopをHDDにインストールしたところ、起動速度が約2倍もかかりました。私はHDDだけのパソコンって遅く感じてしまい、もう使えません。所持しているすべてのパソコンにSSDを搭載しています。クリエイター向けPCでもSSDは必須です。
LuxMark
LuxMarkとはレンダリングの速度を計測できるベンチマークソフトです。OpenCL用の性能を評価してくれます。なぜOpenCL用ベンチマークソフトを使うのかというと、PhotoshopはOpenGLとOpenCLの両方に対応していて、例えばフィールドぼかしのようなフィルタはOpenCLに最適化されているからです。
つまりOpenCLに対する性能が高いグラフィックボード、あるいはパソコンを使うとフィルタの反映速度が早くなるわけです。この画像では左側がQuadro K2200、右側がCPUのスコアです。やはりQuadro K2200は優秀ですね。さすが世界シェアトップのクリエイター向けグラフィックボードです。
3DMARK
「イラスト制作にも使いたいけれど最新オンラインゲームもプレイしたい!」と思うならQuadroはおすすめしません。クリエイター向けソフトウェアの多くはOpenGLで動作していますが、ほとんどのオンラインゲームはDirectXで動作しているからです。QuadroはOpenGLやOpenCL用です。DirectXに対する性能はあまり高くありません。
3DMARKはDirectX用ベンチマークソフトです。ゲーミングPCの性能を計測するのに世界中で使われています。4026というスコアが出ていますが、GeForceシリーズだとミドルスペック以下です。ミドルスペックのGeForce GTX960でも6000以上のスコアが出ます。
もちろんこのパソコンでもオンラインゲームを遊ぶことはできますが、ゲーミングPCとして買うならコスパが悪すぎます。それなら素直にGeForce GTX960やGTX970を搭載したパソコンを買うべきです。
DAIV-DQZ500M1の評価
オンラインゲームはほぼやらなくて、イラスト制作や動画編集のためのパソコンを探しているならDAIV-DQZ500M1は非常におすすめです。プロのイラストレーターも満足できるスペックです。レビューのためにPhotoshopやSAIを触りましたが、誰もが納得できる性能だと実感しました。
メモリをどれだけ増やすかはあなた次第です。比較的軽いファイルしか扱わないなら32GBで充分です。でもプロなら、あるいはプロを目指すなら64GBに増やすべきです。1つの操作につき、たった1秒の違いだとしても、塵も積もれば山となります。最終的にイラストを完成させる時間を大幅に短縮できます。
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